(左から)細見大輔、ラサール石井、萩原聖人、植田圭輔
撮影:國田茂十
石井光三オフィスプロデュース「死神の精度~7Days Judgement」が、本日東京・あうるすぽっとで開幕。本番を目前に控えた劇場では公開リハーサルと囲み取材が行われ、キャストの萩原聖人、植田圭輔、細見大輔、ラサール石井が登壇。作品にかける思いを語った。
原作の「死神の精度」はデビュー以来次々と作品を発表し、若者を中心に人気を博す伊坂幸太郎氏の代表作のひとつ。2009年8月、伊坂氏の小説としては初の舞台化を果たし、時間と空間を共有する"ライブ"ならではの作品として、伊坂ファンからも演劇ファンからも好評を得た。そして初演から9年、今回は東京公演を皮切りに6都市を回る地方ツアーと、スケールアップを遂げて再演が実現した。
脚本・演出は初演に続き和田憲明。主人公の死神を演じるのは、先日プロ雀士の資格を取ったことでも話題になった萩原聖人。若手ヤクザには2.5次元舞台や「火花」の舞台出演でも注目されている植田圭輔。もう一人の死神に、演劇集団キャラメルボックスを経て声優にもフィールドを広げている細見大輔。そして死神のターゲットとなり「死」を判定される任侠の男・藤田は、初演から続投のラサール石井が演じる。ユーモアとエンターテイメント性溢れる笑いに包まれつつ、雲の向こうに青空があることを信じられるような人間ドラマに仕上がった。チケット情報ほか詳細は
公式サイトへ。
■萩原聖人
四半世紀ぶりに和田憲明さんの演出作に出させていただきます。和田さんの濃密な演出を久しぶりに受けてみて変わったな、成長できたかなと思うところもあれば、25年経っても良いところはそのまま変わらない和田ワールドでした。稽古場で、はじめ僕の考えた千葉のイメージとは違う千葉を和田さんから要求され、やりたい芝居と良い芝居は違うんだなと感じましたが、和田ワールドとして成功した作品だと思っています。
―先日、ドラフト任命されプロ雀士になりましたが
“俳優”にどっぷり浸からなければできない作品だと思っています。一度リセットした気持ちで真剣に向き合うことができました。俳優とプロ雀士という2つの仕事に対して向き合うのにとても相応しい作品だと思っています。
―この作品を麻雀に例えるとどんな役になりますか?
純チャン三色(純全帯ヤオ九三色同順)ですね。しかも捨て牌が2枚出てて待ちが悪いやつ(笑)。
■植田圭輔
僕は皆さんよりもずっと年下で、大先輩たちとの稽古でしたが、どれだけ一生懸命食らいついていけるか、余計なことを考えず、素直にぶつかってきました。飲み込むこともあれば、なにくそ!と思うこともありましたが、今思うと楽しいお稽古場でした。僕の演じる阿久津は、人間臭くて屈折していて、ちょっとまぬけなところがあります。阿久津の人間くささが好きだし、僕自身と似ている部分を感じていたので、演じやすかったです。
観終わったあと、雨も晴れの天気も好きになっていただけるんじゃないかな。皆さんからどんな反応や感想がいただけるか楽しみです。
■細見大輔
永遠に初日が来ないのでは、というぐらい緻密な稽古をしてきました。和田さんを信じて、本番を迎えたいです。僕は、実は劇中着替えが大変なのですが、和田さんが最後までこだわった衣装にも注目していただきたいです。華がない男ばかりのキャストですが、僕は植田くんはこの作品のヒロインだと思っています(笑)。彼の頑張っている姿をぜひ観に来てください。
■ラサール石井
初演から9年が経ちましたが、また新たに1から創り上げてきました。ゲネプロではドキドキで緊張はしましたが、失敗せずできたかなと、一安心しています。初演の時は、上演期間中にセリフや演技がまとまって安定してきたかなという時に、和田さんから「常に“今”を演じているんだからもっと流動的に!」とダメ出しを受けたこともあって。安定を望まない演出家さんなので、今回、幕が開いてからもあるんじゃないかな。
伊坂幸太郎ファン、演劇ファン、そしてエンタメ作品のファンの方でも楽しめる作品ですので、ぜひ観に来てください。
ストーリー
「死神の精度」主人公は死神。その姿は毎回“仕事”がしやすいように設定されている。
「死」を実行される対象となった人間を一週間、つまり7日間調査し、その実行が「可」か「見送り」か 判断し報告する。
調査員の死神は、実行がどのような形でなされるかを知らないが、8日目、死神はそれ を自ら確認する。そうして、死神のひとつの仕事が終わる。
調査と言ってもたいそうなことではない。1週間前に相手に接触し、2,3度話を聞くだけ。判断基準は個々の裁量にまかされているが、よほどのことがない限りは「可」の報告をすることになっている。 死神たちは人間やその死には興味がないが、人間界のミュージックはこよなく愛している。これは死神に共通して言える事で、CDショップに行けば必ずといっていいほど他の死神と出会う事が出来る。
主人公である「死神」が仕事のために人間界へ赴くと必ず雨が降っており、彼は青空を見たことがない。
今回、彼が担当するのは、藤田という中年の男だった。
事前に渡された情報によれば、やくざ、ということらしい。
死神の千葉(萩原聖人)は指令を受けてヤクザの藤田(ラサール石井)のところにやってきた。今回の彼の姿は40代の中年男。
藤田は兄貴分を敵対する栗木に殺され、その敵を取ろうと舎弟分の阿久津(植田圭輔)に探らせていた。
死神を派遣する情報部の予定通り、阿久津は千葉と巡り会う。
藤田が匿われている部屋に潜入した千葉は藤田を観察し始める。
馬鹿正直なくらいの任侠の男、藤田。その藤田に心底惚れ込んでいる阿久津。
死神・千葉が加わったことで、彼らの運命は加速する。
ストーンズの能天気なブラウンシュガーがBGM代りに鳴り響く。