世界的な人気漫画『PLUTO』を2015年に舞台化し森山未來が主演した「プルートゥ PLUTO」。魅力的なキャラクターと怒涛のストーリー展開を、ダンス、音楽、映像、パペットなど演劇の枠を超え、多彩な表現方法を駆使し、新しい舞台の形の提示に成功し、高い評価を得た本作が、2018年に3年の時を経て上演される。2018年版では、構成・演出などを新たに構築し、新しいキャストを迎え、新作公演さながらの上演となる。
演出は、ローレンス・オリヴィエ賞を2度受賞、2014年には母国ベルギーでその活動が高い評価を得て国王から爵位の名誉称号を授与されるなど現代舞台芸術を牽引する世界的天才振付家、シディ・ラルビ・シェルカウイが2015年の公演に引き続き手掛ける。演劇やコンテンポラリーダンスの公演はもちろんのこと、バレエ、オペラ、歌劇などの演出・振付でも幅広く活躍するなど、新作を発表するごとに常に世界中の注目を集めている。
主演は森山未來。2015年度文化交流使として1年間イスラエル・ベルギー・ヨーロッパを拠点に活動し、今では“俳優”“ダンサー”といった垣根を越えた表現者として高い評価を得ている森山が、2015年の公演では“心揺さぶる”と絶賛された「アトム」に再び挑む。
本作の紅一点となる、不思議な能力を持つ「ウラン」とゲジヒトの妻「ヘレナ」には、本作が初舞台となる土屋太鳳。映像での活躍はもちろんのこと、幼いころからダンスを習い、大学では舞踏学を専攻し、世界的歌姫シーアのMVにも出演するなど身体能力の高さは立証済み。ラルビ演出・振付のもと、森山・土屋のパフォーマンス競演にも注目だ。
更に、物語の謎を追う刑事であり、高性能ロボットでありながら自身のアイデンティティを追い求めるという難役「ゲジヒト」には若手実力派の大東駿介、大きな包容力でアトムとウランを見守り続ける「お茶の水博士」にはベテランの吉見一豊、物語のキーパーソン・天才科学者「アブラ―」を演じるのは孤高の存在感を持つ吹越満、人間の持つ不可解さまで感じさせるその強烈な個性で、アトムの生みの親であり、ロボットに複雑な想いを抱く「天馬博士」には、日本を代表する個性派俳優の柄本明が扮する。
チケットは2017年10月発売予定。
あらすじ
ロボットと人間の物語ではない…
これは、全人類に叩きつけられる【愛】と【憎しみ】の黙示録!!
人間とロボットが共存する時代。世界最強といわれるロボットが次々と破壊される事件が起こる。高性能刑事ロボット、ゲジヒトは犯人の標的が、自身を含めた7体の大量破壊兵器となり得るロボット達だと確信。日本に渡り、限りなく人間に近い存在であるロボット、アトムと共に謎を追うことに。内戦で家族を失った世界最高峰の頭脳を持つ科学者アブラー、人間を殺害した唯一のロボット、ブラウ1589との接触により核心に迫っていく。
ゲジヒトは日々、忌まわしい悪夢に苛まれ、妻ヘレナも彼の不調を感じ不安を隠せない。アトムもまた、お茶の水博士に愛情豊かに育てられながらも、自身の生みの親である天馬博士との複雑な関係がその心に影を落としている。葛藤を抱えながらも事件の解決に向けて尽力するアトムとゲジヒトであった。
時を同じくして、アトムの妹で悲しみを察知する能力を持つウランが廃墟の壁に花畑の絵を描く不思議な男と出会う。そこにアトムが駆け付けると、男に異変が起こり……
森山未來
2012年にシディ・ラルビ・シェルカウイ氏によるダンス作品『TeZu kA』に関わらせていただき、それに続きまたしても自身が敬愛する手塚治虫さんの作品(もちろん浦沢直樹さんの作品でもありますが)で彼と仕事をさせていただけることに縁を感じていました。
ダンス、芝居、映像など様々な要素をラルビの感性によって有機的に絡み合わせ、それを演劇作品として打ち出せたことが新たな視点を生み出すことになったのではないでしょうか。個人的には、文化交流使としてイスラエルに1年間派遣されていた状態から日本に戻ってすぐの公演だったので、日本の商業舞台の構造を改めて客観的に見ることができるタイミングでもありました。一度生まれた作品が一度限りで終わることなく、また関わることができることの喜びを最近は感じるようになりました。できる限り新鮮な気持ちで、ブラッシュアップを重ねて作品がより豊かになるよう精進できればと思っています。
土屋太鳳さんとはいつか関わることができればと思っていたので、一緒に作品作りができるのを今から楽しみにしています。アトムとウランのデュオができたりしたら面白いですよね。
土屋太鳳
演技に心を奪われてから12年、「舞台」という場所に憧れ続けてきました。役を生きる役者さんがたは、動く太陽のように輝いたり、全てが消えてしまいそうなほど胸に迫ったり…素晴らしい演技をたくさん拝見してきました。だからこそ、舞台という場所を目の前にした今、畏れを強く感じています。この畏れを、表現者の方々や時間との出会いによって作品にふさわしい何かに替え、舞台の上で、ウランとヘレナとして生きたいと思います。
(2015年の作品は)お正月に放送された映像を拝見しました。鳥肌がたち、作品というより預言に近い世界観に驚きましたが、深く膨大なメッセージの中に、人が人に伝えるべき大切なものが含まれる物語だと思いました。森山未來さんは、ドキュメンタリー番組を拝見して以来、素晴らしい表現者として心の中にいつも存在しているかたです。森山さんを中心にキャストの方々が表現する世界は壮絶だけれど美しく温かく…自分が将来もし子どもを育てる立場になったら、一緒に観たい作品だと思いました。
大東駿介
子供の頃から手塚作品に魅了され続け、その中でも鉄腕アトムは、数々のエンディング含め、大人になった今だからこそ心打たれる僕にとって大切な作品です。『PLUTO』ももちろん読んでいました。地上最大のロボットが浦沢さんの解釈で新しく壮大に、繊細に描かれる世界にワクワクしながらのめり込みました。まさかそれを舞台でやるとは…!と興奮と悔しさ半分で観劇した前回の公演。浦沢さんの『PLUTO』の繊細な心の描写が圧倒的な身体表現で見事に表現されていたのが印象的でした。そんな勝手に思い入れのある作品にまさか参加できるなんて…。とても楽しみです。
吉見一豊
ダンス観賞好きの私にとって、ダンサーの皆さんと一緒の現場にいられたあの時間は、本当に胸踊るものでした。今回もっともっと彼らのエネルギーと混じり合えるようイメージをもって臨みたいと思います。皆さんよろしくお願いします。
吹越 満
森山さんとは、予てより、いつかご一緒できたらよいですね、と言い合っておりましたので、今回の参加、大変嬉しく思っています。ラルビさんとのコミュニケーションはやはり日本語ではないでしょう、、。外国語が全くダメな私は、この機会に少しでも英語が身に付いたらいいな、なんて呑気なことを考えつつ、絶対、足を引っ張っちゃいけない!と緊張もしているのです!!!
柄本 明
ラルビは稽古場で毎日新しい問題をおこす。それをやるためにはどうすればいいのか……。それをみんなで考える。そんな真っ当な稽古場でした。幾何学模様が動くたび世界は変わる。あるいは変わってしまう……ということを通しておそらく観ている人の潜在意識にタッチしていったのだと思います。今度はどんな稽古場になるのか?楽しみであります。