人々がインターネット上の仮想空間<ネザー/NETHER>で膨大な時間を過ごし、現実を捨て仮想空間に生きる場を求める人も出てきてしまう…「人の欲望の暴走」と「倫理の危うさ」を、5人の登場人物で鮮やかに描く本作。英国The Royal Court Theatreで絶賛を受け、ローレンス・オリヴィエ賞(2015年)では4部門にノミネート、舞台装置で最優秀賞を受賞した。
今回上演台本・演出を手がけるのは瀬戸山美咲。振り込め詐欺、原発事故、イラク戦争ほか多くの社会問題を題材にした作品を送り出し続ける瀬戸山が、人間の欲望や犯罪倫理、さらには近年話題となった#MeToo運動やLGBTといった、性自認や性的指向に着目。主人公の性別を女性から、あえて性的なことに恐怖心や嫌悪感を抱く男性にすることで、男性vs.女性の構図に捉われない人間と人間の物語として再構築する。
そして主演を務めるのは、2017年の『あんちゃん』以来2年ぶりの舞台出演となる北山宏光。本作では思い描いたことが実現してしまう、欲望渦巻くネット上の仮想空間を捜査する捜査官役を演じる。
共演には、24歳で歌舞伎役者の名跡を襲名し、今ではその柔軟な演技で引く手あまたな中村梅雀。蜷川幸雄演出の舞台でデビューし、近年は劇作家・演出家としても精力的に活動しているシライケイタ。「つかこうへい事務所」の旗揚げから解散まで屋台骨を支え、近年は次代を担う幅広い作家・演出家としても注目を集める平田満といったキャリアと実力を兼ね備えた顔ぶれが揃った。チケットは8月31日(土)発売。ほか詳細は
公式サイトへ。
◎瀬戸山美咲(上演台本・演出)
人間は肉体と心を持つ限り、「満ち足りなさ」や「寂しさ」を感じてしまう……。この作品はインターネット上の犯罪をサスペンスフルに描きながら、そういった人間の普遍的な姿を描いています。また、テクノロジーと倫理、仮想空間での表現の自由など、今、私たちが直面している様々な問題が盛り込まれている戯曲です。とても刺激的なキャストが揃いました。みんなで化学反応を起こしながら、人間の本質に迫っていきたいと思います。
◎北山宏光
初めてお話をいただいた時、その世界感と内容に最初は戸惑いました。ただ台本を読みこんでいくと、これは現実でも起こりうる可能性もある話だし、社会的なメッセージが込められていて、非常に楽しみになってきました。表現するのには、まだまだ未知数な部分もありますが、良いチャレンジになると思っています。共演者の方々も、大先輩ばかりで、生半可な気持ちでは到底、太刀打ちができないので、ちゃんとしがみつき、自分の中でも成長できる舞台にしたいです。
◎中村梅雀
芸歴55年目にして、出演者が少人数のお芝居に出るのは初めてです。海外作家の作品も数えるほどしか出演していませんが、今回の【バーチャルと現実の世界を行き来する物語】がどんな舞台になるのか、今からとても楽しみです。立派な仕事をしても、家族が居ても、どうにもならない心の歪みや孤独を抱えてしまう人間の、デリケートでチャーミングな深層心理に迫る面白い作品です。是非、沢山の方々に観ていただきたいです。
◎シライケイタ
命の根源や生きることの本質を問い、生きるって何だろうと感じさせるようなこの作品に、俳優として参加できることを、本当に嬉しく思います。最近は脚本や演出をする機会が多く、久々に出演のみに集中する作品になるので、とても楽しみにしています。今をときめく北山さんや大先輩方とともに、良い作品を作っていきたいと思います。
◎平田満
このような視点の作品をあまり観たことがなかったので新鮮な気持ちで台本を読みました。仮想空間というのは、僕にはあまり馴染みのない世界ではありますが、この作品の世界観や人間関係を、どれだけリアルに感じられるものなのかがとても興味深く、その中でシムズという役にチャレンジできることにやりがいを感じています。キャストの皆さんや演出の瀬戸山さんと一緒になって、今まで観たことがない、やったことがない演劇になればいいなと思います。
◎あらすじ
インターネットが発達した近未来。
人々は<ネザー/NETHER>という仮想空間で膨大な時間を過ごしている。捜査官・モリス(北山宏光)はネザーで おこなわれる犯罪を取り締まっている。尋問室で、彼はシムズ(平田満)という男と対峙していた。シムズには自分の管理する「ハイダウェイ」というエリアで子供との性行為を提供しているという疑惑があった。モリスはハイダウェイの顧客だったドイル(中村梅雀)という男の尋問も並行して進めていく。
また、モリスはハイダウェイに潜入捜査官・ウッドナット(シライケイタ)を送り込んでいた。ウッドナットはそこでアイリス (長谷川凜音/植原星空)という美しい少女と出会う。