山田ジャパン公演「HEY!ポール!」が本日開幕。脚本・演出家であり映画監督としても活躍する山田能龍が2008年に旗揚げして10周年記念の“3連打公演”フィナーレとなる本作。初日公演を前に、キャストの山本亮太(宇宙Six/ジャニーズJr.)、いとうあさこ、脚本・演出の山田能龍がコメントを寄せた。
舞台はポールダンスが観られるカフェバー「東京センターポール」。常連客達はそれぞれがそれぞれの傷を抱えながらも享楽的な日々を送っていたが、ある日、ふとしたきっかけからそれぞれの傷をさらすことに……。
山田能龍の描く世界は、独特の言語感覚と哲学、コメディー感で構築される。その世界観が、ある瞬間に誰もがふと抱く「不足感」に接触して、共感を得る普遍性へとダイナミックに昇華してきた。奥には拭い去ることのできない切なさが漂いつつ、ときにはクスリと、そして登場人物の不甲斐なさまで愛らしく思えてくる秀作。チケット情報ほか詳細は
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■山本亮太(宇宙Six/ジャニーズJr.)
とても楽しいお稽古でした。色々と吸収できるものがいっぱいあって、僕自身の「芝居力」が広がったような感覚です。僕は体で覚えるタイプなので、山田さんのように、具体的で、実際にやってみてくれる演出はとてもありがたかったです。稽古場ではほかの方へ言われた内容も聞きながら勉強することができました。とても楽しい環境です。山田さんとは、稽古場で同じ感想を持てたり、似た感覚がある気がします。今から、公演が終わってしまうのがもったいなくて、もっと続けていたいと思ってしまうほどです。と言っても、平汰はシーンによって見せる顔が違って、喜怒哀楽、どんどん順番に見せなければいけない役なので、感情的に本当に大変なんです。お稽古を通して、芝居のスイッチというか、感情の切り替えのスイッチを見つけられたような気がしていて、大変さを楽しいと感じられるようになりました。大変ですが(笑)…本当に本当にいい作品です。声を大にして、伝えたいです。
■いとうあさこ
いよいよ幕が開きます。私はこう見えて、ってどう見えているかわかりませんが(笑)かなりの緊張しいで。だからドキドキしていないと言ったら嘘になりますが、今回は断然ワクワクが勝っているんですよね。多分この「HEY!ポール!」と言う作品そのものが持つエネルギーが凄く強くて。その力に自分も奮い立たされているのかと。でもその分パワーがいるので、今はむしろ49歳の体力・気力が千秋楽まで持つかが心配(笑)。
何はともあれ、おかげさまで10周年を迎えられました山田ジャパン。元々芸人仲間だった山田能龍氏の“劇団を立ち上げる”と、私の“お芝居したいなぁ”がビタッと合ったあの運命的な瞬間。そんな10年前の夜を今でもよく思い出します。最初はお客様より舞台に出ている人間の方が多いんじゃないか、と言う日もありました。それが今や同じ板の上にジャニーズ、劇団四季、宝塚、芸人などなど。本当に 面白い劇団になったなぁ、と(笑)。これからも速度の速い遅い はわかりませんが山田ジャパン、進んでいきます。そしてまた20周年のご挨拶が出来たら。あ、 その時私、59歳か。さて、どうなっている事やら(笑)。
■山田能龍(脚本・演出)
稽古はとてもいい感じで進行できました。まず座組の雰囲気ですが、ミッションとして「和を作った」のではなく、ナチュラルに「和が出来ていた」という感触です。稽古で群像シーンを演じながら仲間意識が芽生え、互いにグルーブを感じていく。僕がシビアに要求する内容にも、手を取り合ってしっかり応えてくれる。そうして稽古の中で掴んだ信頼関係と並行して、皆でご飯に行って親交を深め、稽古場の外でもいい空気が出来上がっている。いつの間にか劇団の若手をゲストがいじって盛り上がっていたり。相互作用というか、稽古場の内外で同時にチームメイトになっていけた手応えです。
主演の山本くんについて。今回彼には、とても不思議な体験をさせて貰いました。稽古初頭は「もしかしたら少し不器用なタイプかな?」と思っていたんです。それが…大間違いだった(笑)。彼は稽古が進むにつれて加速度的に仕上がっていき、「ある三日間」で一気に平汰を創り上げました。もちろんそれまでの蓄積があったのですが、平汰という役と自分を同化させる期間、腑に落とす期間があり、その三日間で信じられない速度と迫力を持って平汰に変身した。と同時に…とてつもなく器用な俳優にも変身したんです。俳優がある期間で役を掴むことは、そう珍しくはありません。しかし役を掴んだことで本人のスペックまでが様変わりする、という経験は初めてでした。もうラストシーンの稽古をしていた頃には、一度に10個以上の注文を出しても「はーい分かりました」と軽快に言って、次の一回で全部完璧に修正をしている、そんな無双状態でした。その時は平然を装いましたが、こっそりと驚いたのを覚えています。凄い才能だと思います。
劇団は結成10周年を迎えました。変わらない関係を保つために、それぞれがアップデートして変わり続ける日々を重ねてきました。今も変わらず仲良しの皆を、月並みですが家族のように想っています。結成の時に新宿の安居酒屋で、『どうせいつか、バラバラになったとしても、今日みんなで握手したことは覚えておこうな』と話したことを覚えています。案外、まだ握手したままです。これからもこの握手が続いたらいいなと思います。