英国気鋭の演出家フィリップ・ブリーンと大竹しのぶ、大倉忠義、杉野遥亮、池田成志らが挑む『夜への長い旅路』が東京・Bunkamuraシアターコクーンで開幕。出演者コメント及び、舞台写真が解禁された。
DISCOVER WORLD THEATREシリーズの第10弾に、ノーベル文学賞受賞、ピュリッツァー賞4回受賞などの輝かしい経歴を持ち、“アメリカ近代劇の父”と称される劇作家、ユージン・オニールの遺作『夜への長い旅路』が登場。青春時代における凄惨な家族の姿を描いたオニールの自伝劇といわれる本作は、戯曲冒頭にて「血と涙で綴られた、古い悲しみの劇」と記されており、悲劇的な家族の歴史を人間の真実を突く普遍のドラマに昇華させ、自らの人生に“赦し”を与えたオニールの代表作でもある。
演出を手掛けるのは、シアターコクーンでの舞台作りは4作目となるイギリス演劇界のトップランナー、フィリップ・ブリーン。人間を深く見つめ、物語を繊細に紡ぎ出すことで定評のあるフィリップが、実力派とフレッシュな才能の交わった俳優陣を迎えて、オニールの最高傑作に挑む。
モルヒネ中毒に冒されて常に精神が不安定な母メアリーに大竹しのぶ、アルコールに溺れ、父親の脛をかじって放蕩を繰り返す長男ジェイミーに大倉忠義、結核を患っている次男エドマンドに杉野遥亮、アイルランド系移民で、金銭に対して異常な執着を持つ俳優の父ジェイムズ・タイロンに池田成志、一家の女中に土居志央梨。
オニール家をほぼ忠実に再現したとされるタイロン家の、夏のある一日の物語。オニール自身が投影された次男エドマンドの視点のみならず、母、兄、父、家族4人の個々の内面が深く掘り下げられ、それぞれの抱える哀切や怒り、後悔や絶望、そして家族間の愛憎、確執が、巧みな会話の応酬で見事に表出された家庭劇に仕上がった。心揺さぶる衝撃の舞台に期待が集まる。チケット情報ほか詳細は
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■大竹しのぶ
ある日の稽古場で、画面越しに初舞台の(杉野)遥亮くんにアドバイスするフィリップの言葉を聞いて、気が付けば私が深く頷いていたり、稽古場最終日、稽古が終わり「まだまだダメだ」と落ち込む遥亮くんに「私も一緒だよ」と慰めていたら、それを見ていた大倉くんが「俺もだよ、どうしよう」と三人でため息を吐いていると、もうモニターを切ってもいいのにフィリップがまたマイクをONにしてくれて「どうしたの?」と聞いてくれる。6000マイル離れていても、いつもそこにいてくれるんだと思えた瞬間でした。
思っていた以上に大変な戯曲であることが分かり、そして毎回のことですが、フィリップの戯曲の深い理解に感動しながら、稽古を重ねてきました。
それぞれが苦しみや、悲しみや絶望を感じていても、それぞれが大きな愛を持っている。だからこそ切なくて、そして美しい物語です。こんな状況の中でも来て下さることに、本当に感謝です。
■大倉忠義
段々と家族のような絆が生まれていくような感覚を味わいながらも、馴れ合いではないプロの役者さん達の集中力で稽古が進んでいったことが思い出深いです。そして、稽古を経ても、まだまだこの戯曲の大きさ・深さに驚かされています。
愛憎劇という、なんでこんなに愛しているのに悲しいことばかり起こるのか…と思いながら演じています。こんな形の家族を見て、お客様へ何でもいいので何か宝物になるような経験を持って帰っていただけるように頑張りますので、どうぞ愛を持って見守ってください。
■杉野遥亮
皆さんと稽古をする中で、演技とは芸術で、俳優とは芸術家なんだと学ぶことができました。俳優や演技に対する自分の中の意識がガラッと変わりました。何もかも初めてのことで、こんなに長い時間役と向き合うことが今までになかったから、自分と役との境目がわからなくなったこともありました。自分がどこにいるのかわからない時もあって、これが役に向き合うということなのか・・・初舞台で毎日素敵な経験をさせていただいています。劇場に入り初めて舞台上から客席を見た時はすごくワクワクして、もっともっと稽古をしたいという気持ちもあるけれど、早く観ていただきたいという気持ちも湧いてきました。物語はとても暗く、残酷にみえますが、そんな物語を今この時代に、この瞬間に上演することに意味があり、希望があると思っています。一緒に楽しんでください。
■池田成志
演出家と海を挟んだ遠く離れてのリモート稽古で、空気感などがお互いうまく伝わっていない部分もあったなとも感じていて、もっと稽古をしたかった…。
僕の役は、奥さんのモルヒネ中毒や、息子の病気という心配事が多いので、単純な苛立ちに感情をフォーカスしがちになってしまい、治る、きっとうまくいく、というような家族としての基本的な気持ちになかなかたどり着くことができなかった。作品を通して、家族って単純ではないんだな、難しいなと改めて感じました。
この作品は台本が分厚くてものすごい情報量です。身に染みたとか、わからないとか、ここが響いたとか、観てくださった方それぞれに、色々な感情がわいてくると思います。それだけ複雑な内容なんだと僕たちも実感しています。とても苦しくなると思うので、休憩中にいっぱい深呼吸してください(笑)。終わったら、少しだけ気が晴れるような作品にもなっていると思います。
■ストーリー
1912年、夏のある日の朝。俳優ジェイムズ・タイロンの別荘の居間で、家族が朝食後の団欒を楽しんでいる。しかしその会話から徐々に明らかになるのは、彼らの実像、家族を覆う暗い陰である。父ジェイムズは異常な吝嗇家であり、母メアリーは麻薬の常習者、長男ジェイミーは酒と女にだらしない放蕩息子で、次男エドマンドは肺を病んでいる。メアリーは昔、幼い息子ユージンを亡くしたことで罪の意識にさいなまれていた。その後にエドマンドを出産し、産後の病気をきっかけにモルヒネ中毒に陥ってしまったのだ。家族の確執が次第にあぶり出されていく中、再びモルヒネに手を出したメアリーが幻覚に襲われ始めて……。