明日12月17日(土)から新国立劇場・小劇場、その後福岡・名古屋・仙台にて上演される『スルース~探偵~ スルースバージョン』。本日劇場で公開リハーサルが行われ、キャストの西岡德馬、音尾琢真が意気込みを語った。
本作は著名なミステリー作家のアンドリュー・ワイクとその妻の愛人である男のマイロ・ティンドルが対峙するサスペンス劇。「スルースバージョン」に先立ち、11月25日(金)~12月11日(日)まで西岡德馬vs新納慎也のキャストで上演された「探偵バージョン」では、逆転の連続となる騙し合いの展開と、観客もが騙される俳優陣の迫真の演技が大好評を博した。「スルースバージョン」では、アンドリュー・ワイク役は引き続き西岡德馬が全公演に出演、その妻の愛人で、アンドリューと対峙するマイロ・ティンドル役にTEAM NACSの音尾琢真が挑む。今後は地方公演も含めて「スルースバージョン」を上演。チケット情報ほか詳細は
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◆西岡德馬
「探偵バージョン」では新納さんとの共演でしたが、彼は二枚目ですから、自分の奥さんを取られるのはイヤだな、なんて思いながら演じていました。ところが、次に音尾さんと稽古してみると、新納さんと同じ役なのにこれほど違うのかと、演じる人によってこんなに役が変わるものなのかと、長い俳優生活の中でこの歳になって驚かされるぐらい、二人の役は異なっています。
これから上演する「スルースバージョン」の音尾さんの演技は、「探偵バージョン」の新納さんより少しテンポが早いんです。演技は俳優同士のキャッチボールですから、彼に合わせてついて行こうと、頑張って演じています。
両作品とも演じるのは70歳の僕には体力的に大変キツイですけれども、この年になってやりたかった作品で演じられる機会に恵まれ、異なる役者さんと2バージョンもできるなんてなかなか無いことですし、本当に神様からの贈り物のように感じています。僕にとって70歳の記念樹的な公演です。
探偵バージョンを観た人には「緊迫感で息が詰まりそうだった」との感想をいただきました。2016年の年末に、凄い芝居を観てきたと感じてもらえると思いますので、どうか楽しみに、ぜひ劇場まで足をお運びください。
◆音尾琢真
一つ言えることは、2016年はこれを見ないと終われないぞと。そういう素晴らしいお芝居でございます。
新納さんからバトンをいただいた私がマイロ・ティンドル役を演じるスルースバージョンが、いよいよこれから初日を迎えます。探偵バージョンの千秋楽では新納さんが「スルースバージョンはややランクが下がりますけど・・・」などという”素敵なジョーク”を仰っていましたけれども、今だから言います、ランク、上がってしまいました(笑) このランクが上がりに上がった”スルースバージョン”は、もう絶対に見逃してはならないと思うのであります。
この作品はなかなか見れるお芝居ではないと思います。大変完成度の高い戯曲で、基本的には少人数の舞台なのですが、登場しない人物の姿が浮き上がってきたり、家族模様が見えてきたりと、非常に広がりのある、奥行きのある作品です。1970年代に書かれたとはいえ、けして古臭い、淡々とした話などではなく、また良い意味でPOPさもあるサスペンスになっています。現代の生のお客様でも気軽に楽しんでいただける演劇になっておりますので、ぜひ年末はこの作品で締めていただきたいと思っております。
STORY
マイロ・ティンドルはある日、著名なミステリー作家であるアンドリュー・ワイクから呼び出しを受ける。実はマイロは、アンドリューの妻とひそかに付き合っていたのだ。不倫の追及を受けるものと思っていたマイロだったが、アンドリューは「浪費家の妻にはほとほと困り果てていた」「私にも素敵な愛人がいる」と切り出し、自宅の金庫に保管している宝石を泥棒に扮して盗んで欲しいと言い出す。宝石には盗難保険がかかっているため、自分は保険金と愛人を手にし、マイロには宝石と妻を与えるというのだ。虫の良い話だったが、金銭的に厳しいマイロは、完璧な犯罪と思わせるために作家のアンドリューが考えた筋書きどおりに、珍妙な手順で宝石を盗み始めるが……。